「虚言癖」嘘の特徴と原因・「嘘つき」との違い

彼氏に虚言癖があるという20代の女性からご相談がありました。
「交際して4ヶ月。嘘をつく以外は優しいし、私は彼の嘘に突っ込めるから良いが、仕事が長続きしないのは虚言癖が原因かもしれない。結婚の話が出ているけど、今の仕事が続くのか心配だし、子供が生まれてからも嘘をつき続けていたら子供にも影響しそうで怖い。結婚に不安がある」

隠し事があって嘘をつくのでもなく、保身のためでもなく、誰かを貶めたいのでもなく、「ありえないような大きな嘘」を何度もつく人に会ったことはあるでしょうか?

小学生の頃に会ったことがあるとしても、大人になってからは会ったことが無い人が多いと思います。

大人になってからこのような嘘をつく人に出会うと『大人がこんな嘘をつくはずがないだろう』と、最初は冗談だと思ってしまいますが、嘘の回数が増えてくると冗談ではないのだと分かります。そのため「何の為にこんな嘘をつくのだろうか?」と周囲の人を困惑させてしまう虚言癖という癖を持つ人がいます。


「虚言癖」という言葉を知っている人は多いので虚言癖のご相談を受けることがありますが、本当に虚言癖がある人はあまりいません。虚言癖とは「何度も嘘をつく人」のことだと思っている方が多いのですが、保身の為に嘘をつく「嘘つき」と「虚言癖」は違うのです。

目次

虚言癖とは

虚言癖(きょげんへき)とは、どうしても嘘をついてしまう人間の性質をあらわす専門用語で、1891年にドイツの心理学者アントン・デルブリュックによって提唱された俗語です。

虚言癖については色々と言われていますが、何らかの精神疾患のように妄想や幻覚と現実の区別が付かなかったり、誰かを傷つけてまで嘘をついて注目を浴びたり、誰かをおとしめる為でもなく、本当にあった出来事を大袈裟に話すのでもなく、詐欺など罪を犯すのでもない、特に大きな目的もない嘘を日常的に簡単につく癖です。

「嘘つき」との違い

冒頭の女性のように「嘘」が悩みとしてのご相談は「虚言癖」であることが多いのですが、「主な悩み」+「虚言癖もあるようだ」とご相談される方の殆どは虚言癖ではありません。

ご自分で「私には虚言癖がある」と言う人の嘘の内容を聞いてみると、宿題が終わっていない子供が、親から「宿題終わったの?」と聞かれ、怒られるのを恐れて咄嗟に「終わった」と答えてしまうような嘘が多く、「理由がある」「嘘」をつき、嘘の内容をしっかりと覚えていて、嘘をついたことを自分の口から話せて、反省できるようなのであれば虚言癖ではありません。

「彼が浮気を繰り返す。虚言癖もある」という方も「彼が浮気を繰り返す。怪しいと思った時に問いただしたら嘘をつかれた。浮気中に私の機嫌をとるために嘘をついたこともある。もう浮気をしないと約束したのに、また浮気をした。嘘ばかりつく」
この彼は自分の保身のために嘘をついているので「嘘つき」です。虚言癖ではありません。

通常、嘘をつく場合には何らかの大きな理由があったり、必要に駆られて仕方なく嘘をつくもので、嘘をついたらどうなるかまで考えて嘘をつきますが、虚言癖の場合は後先も考えず、必要でもない嘘を日常的につくことが癖になっているのです。

「嘘つき」は何かを隠すために嘘つくので、嘘を指摘されると逆ギレすることがありますが、虚言癖の人は嘘をついている時以外は大人しく、嘘を指摘されても聞こえないふりをしたり、黙ってしまうことが多いです。

特徴

  • 思いつきで突然ウソをつく
  • 1の話を10にして大袈裟に話すのではなく、0から作った嘘話をする
  • 普段は大人しいが、嘘をついている時は明るく多弁になる
  • 誰かに起きた出来事の話になると、自分も同じような事があったと言い出す
  • 明らかに嘘だろうと思う話をしていてもオドオドもせず高揚しながら話す
  • つじつまが合わない嘘をつく
  • 嘘を疑われたら嘘を重ねるが、後で全く違う嘘をつく
  • スケールの大きすぎる幼稚な嘘をつく
  • 嘘が悪いという意識が全くない
  • 嘘を咎められても反省しない・嘘をついた理由にも嘘をつく
  • その場で嘘を指摘しても、無視して話し続ける
  • 必要のない嘘をつく
  • どちらかといえば地味なタイプである
  • 嘘をつく事以外で注目を集めようとする行動はしない
  • 借金を抱えていることが多い
  • 何をしても守ってくれる人がいる(親が多い)

虚言癖の「嘘」の特徴

自分の保身の為に嘘をつくことも勿論ありますが、自分が何か得することでもない、目的もない幼稚な嘘を「後で嘘だとバレたらどうしよう」という心配もせずに簡単につきます。疑われるとさらに嘘を重ね、本人は信憑性のあることを付け足しているつもりでとても幼稚な嘘を重ねていきます。

例えば、誰かが好きなアイドルの話をしていると、「そのアイドルと付き合っていたことがある」「友達の彼女だった」と言う。「良い子だったよ」「ちょっと病んでて大変だった」「あまり話しちゃいけないんだけどね」と加えたりする。

交際相手に「今まではモデルとしか付き合ってこなかった」と言う。

誰かが車を買ったというと「自分も以前、同じ車を持っていた」と嘘をつく。そこで「何年前に買ったの?」と聞かれたら「5年前」と即座に答える。「5年前には販売されてなかったよ」と言われたとすると、「社長と知り合いで、発売前に特別に売ってもらった」というように嘘を重ねます。

良いことばかりではなく、誰かが病気になったと聞けば「自分もその病気になったことがある」と言い、誰かが怪我をしたと聞けば「自分ももっと大きな怪我をしたことがあってね、」と話し出す。手術の話なら、手術痕がなくても「手術をした」と言う。悲しい話なら涙を流しながら話す。

任侠映画の話題になれば、実は親や親戚がヤクザだったと言いだす。

誰かから出た話題でなくても、突然「今日さ、こんなことがあってね」と、ありえない話をしだす。

「著名人と知り合いだ」「こんな仕事をしていた」「こんなに稼いでいた」等、
『そんな凄い人が、なぜ今ここにいるの!?』と思うような発言(嘘)をする。

このような幼稚な嘘を後先を考えずにつきます。嘘をつく相手は好きな人も嫌いな人も関係なく、負けたくない人でもなく、上司であろうが嘘をつき、一つの嘘を突き通すこともなく同じ物事についての話が後から二転三転します。

疑われたら嘘を重ね、慌てることもなく話が大きくなればなるほど高揚しながら話します。

単発的な嘘ではなく、ストーリーがある嘘もつきます。

嘘の実例

彼氏 30代前半

彼女が自分の友人に彼氏を紹介した。彼女が友人のことを「◯◯ちゃんは◯◯大学(超難関大)なんだよ」と彼に言うと、「僕も◯◯大学出身だよ」と、友人と同じ超難関大出身だと言い出す。彼女が慌てて「何言ってるの⁉︎どうしたの?」と彼をつついたり、「ちょっと、やめてよ」彼に言っても彼は無視。 彼女が友人に「冗談だからね、」と言っても、彼は彼女を無視して、友人に向かい自分がその大学に通っていた話を真顔で続ける。在学中にYouTuberを始めて直ぐに何億か稼ぐようになったから忙しくて大学を辞めた。でもバイクで転倒し怪我をしたのでYouTuberはやめた。その時に保険が(何らかのトラブルで)切れていて、事故で破損したものを弁償する為にYouTubeで稼いだお金はほとんど消えた。「ほら、事故の時の傷」と、袖をまくって腕の古傷を友人に見せる。三人で会話するのではなく、彼一人で興奮して話し続けていた。

この彼は普段から『ありえない話』をすることが多く、彼女はYouTuberの話は初耳。大学も全く違う大学を出たと聞いていた。腕の傷は、幼い子が車に引かれそうになっていたのを助け、自分が代わりに車に轢かれた時に出来た傷だと聞いていた。友人は、彼の大学の話がおかしいので直ぐに彼が嘘をついているのは分かったそうですが「嘘ですよね」とは言えず黙って聞いていたそうです。彼女の友人には同じ大学だと話し、彼女のお母さんに会った時は違う大学の話をしていました。彼女が後から何が真実なのかを面と向かって聞いても無視して他の話を始めてしまうそうです。

ある男性社員 30代後半

入社して3ヶ月の男性社員が社内に一人でいた。他の社員が戻ってくると、「さっき強盗が入って来た。何とか戦って追い出しました」と言う。手には擦り傷があった。大騒ぎになり防犯カメラを見てみると強盗らしき人物は写っていない。男性を問いただしても何も話さない。きつく問いただすと「そう言ってみたかった」とだけ言う。警察を呼ぶとなった時も「呼ばなくていい」とも言わなかった。特に何かミスを隠そうとしたのでも、仕事をさぼっていた訳でもない。

この男性は口数は少なかったが普段から上司にも同僚にも『どう考えても嘘だと思うような話』をすることが多く、同僚には「履歴書には嘘を書いたが本当は昔、弁護士をしていた」他の人には「以前は会社を経営していた」「関係を持った女性が4桁にいきそうだ」と話していた。

なぜ嘘をつくのか?

保身の為もありますが、注目されたい、かっこいいと思われたい等、嘘をついているその瞬間だけ気分が良くなる為に嘘をつきます。

どんな嘘をついのたかを忘れてしまうことはあっても、妄想を現実だと思っているのでもなく嘘だと分かっています。それでも平気なのは「嘘」に対しての認識が歪んでいて「悪いこと」だとは思っていないからです。自分以外の人も会話の中で嘘をついていることがあるだろうと考えています。

特に想像力に優れているのでもなく、ただ「こうだったらいいな」「こういうことがあったらいいな」と思いついた事をそのまま口にしている。要するに悪気はない。

嘘を悪いとは思っていないが、嘘をついた人や場所であまりにも居心地が悪くなってしまうと、仕事を辞めたり、連絡が取れなくなってしまうので仕事や人間関係が長続きしない。仕事を辞めた理由も周囲の人には嘘をつく。

原因

過去のトラウマやコンプレックスが原因だと言われていますが、幼い頃からに嘘をつき続けていたことと、嘘が許されていた環境から「嘘」に対しての認識が歪んでいることが原因だと言えます。

コンプレックスが原因だと考えられてしまうのは、嘘をつくことに慣れてしまっているために努力して得た達成感よりも「嘘をついているその瞬間だけ気分が良くなる」ことが快感になり努力を怠ってしまうことが多い為、現実は見た目も生活もとても地味にしているか、逆に派手にしている人が多かったりと極端なのでコンプレックスが原因だと思われてしまうのでしょう。

虚言癖を持つ人に共通しているのは、親が何らかの理由から非常に甘やかして育てていたり、無関心だからこそ子供の話をまともに聞いていなかったり、どちらにしても、親が子供の嘘を悪いことだと考えてない

子供が嘘をついていると分かっていても「子供は嘘をつくものだ」「可愛い嘘」と捉え、『悪いことを隠そうとしてついた嘘』ではないなら悪いことではないと考えている。

例えば「僕、今日ね、悪い大人に誘拐されそうになったけど、戦って逃げてきたよ」というような嘘話をしても、親は『子供の可愛い嘘』だと思い「すごいね!◯◯君は強いねー!」と褒めながら聞き続けてしまう。

大人になってからも、他人から「あなたの子供からこのような嘘をついて迷惑がかかりました」と言われても、親は「そのくらいの嘘で騒がれて◯◯(息子の名前)が可哀想だ」と答えたケースや、

結婚してから夫の虚言癖に気がつき、それでも仕事は真面目だからいいかと思っていたが、夫は結婚直後に仕事を辞めていて、借金をして給料をもらっているふりをされていたという女性は、夫の母親に事情を話すと、母親が借金を肩代わりすると言い「嘘くらいついちゃうことあるわよ。私が払うんだからもういいでしょ、許してあげてちょうだいね」と、幼い子を庇うような発言をしたケースもある。

親が幾つになってからも「いつ親元に戻っても大丈夫」という安心感を与えているからか、虚言癖を持つ人は孤独を恐れていないことが多く、嘘をつくことで恋人に振られたら嫌だ、離婚されては嫌だと恐れることがないのです。


また、大人になるにつれ周囲の人間が「嘘をつく人」を相手にしないというのも原因だと言えるでしょう。
子供でも虚言癖がある子はいますが酷いのは小学生の低学年の頃までで、それ以降は大人しくなります。何故なら、子供は嘘をついてばかりいると周囲の子供から「嘘だ!」「嘘つき!」と指摘されます。それが嫌なので黙るからです。

しかし、大人になると陰で噂をする人はいても、嘘を指摘する人は殆どいなくなります。『この人はよく嘘をつくな』と思っても『指摘するのは悪い』『触れてはいけない』と思うので聞き流したり、いちいち反応するのも疲れてしまうので聞き流されます。それを虚言癖がある人は、嘘を信じていると勘違いするので大人になるにつれて嘘がエスカレートしてしまうのです。

虚言癖は治るのか?

本人が強い意志を持って「直したい・治さなければならない」と思わなければ治るのは難しいでしょう。

人が変わる一番の方法は、実は「恐怖」だとも言われているので、人からの信用を失う、恋人に去られる事が「恐怖」となって『嘘をついてはいけない』と思えるのならいいのですが、嘘が原因で仕事を辞めることになっても、友人を失っても恋人に去られても傷つくこともなく、新しい場所で出会った人には同じことを繰り返す人が殆どです。

何があっても支えてくれる親や、借金を肩代わりしてくれる人もいなくなり全てを失った時に初めて「このままじゃマズい」と感じ、生活のために職場では大きな嘘はつかなくなるかも知れませんが、『嘘をついている瞬間だけ気分が良ければいい』という生き方を長く続けていれば、全く嘘をつかなくなるということはないかも知れません。

治す方法があるのだとすれば、身近な人が嘘を聞き流さず、根気よく嘘を指摘しながらも愛情を注ぎ続け「嘘は必要ないのだ」「嘘で得た快感よりも良いこともある」ということを、長い時間をかけて教え続けるしかないのかも知れません。

まとめ

虚言癖のある人は嘘をつく以外は穏やかで優しい人が多いので、周囲の人が嘘をつかれて迷惑がかかったからではなく、心配から助言をしても、助言してくれた人から離れてしまうことが多いのです。

好きな仕事にも就けず、誰かと長く付き合うこともできず、両親も亡くなる前に「瞬間の快感のために、いつかは孤独になってしまう」「嘘をつかなくたって十分に人から好かれる」ということを知って欲しいです。

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