誰も悪者がいない中で②

「誰も悪者がいない中で」の続きです。

「親を一度も嫌だと思ったことがない」という人は、大きな愛情に包まれて伸び伸びと育ちます。
他人に意地悪もされたとしても悪く捉えないので、多少のことでは傷付くこともありません。

嫌なことがあったとしても引きずる事もないのは、絶対的な味方(親)がいるので何も怖くないのです。

自分が人から受け入れられるのは当たり前だと思っているところもあり、無理に人から好かれようともせず、どこかで「自分に害を与える人間はいない」とも思っています。人から嫌われる怖さも、人を失う怖さも知りません。

気持ちを察してくれる親になれているので、他人に気持ちを伝える必要性もわかっていないところがあります。

不機嫌な時は誰の前でも不機嫌な態度のままで居れ、嫌なことがあればNOもはっきり言えます。
感じたことは素直に口に出して、それによって他者が傷つく事もあると考えられない。

人を信じる力が強いので、他人とある程度仲良くなると急に家族と同じような接し方をしてしまうことがあります。


彼がAさんと別れた理由は「Aさんの気持ちが分からないから」でした。

Aさんは、この彼と付き合うまでに、他の男性とも付き合ったことがありますが、
みんな何となく友達の延長として付き合っていただけで「好き」と思うこともなかったそうです。
振られたこともありましたが、あまり悲しいとも思わなかったそうです。

でも彼のことは「好き」と言葉にすると薄っぺらく思えて言いたくないほど大好きだったのです。
彼はAさんにいつも素直に気持ちを伝えていてくれていましたが、
Aさんから彼に気持ちを伝えたことは殆どありませんでした。

伝えようとしても好き過ぎて言えなかったのと、時々彼の前で話せなくなってしまうことがあったので、
気持ちを聞かれても上手く答えることができなかったそうです。

彼の話をしている時に、Aさんは中学生の時に親友が離れていった時のことを思い出しました。
その時の出来事が彼と話せなくなることに関係していたのでした。

親友が離れて行った時のことを思い出すと、彼を失うのが怖くなり急に何も話せなくなってしまったそうです。
でも、演奏について話すときは何も考えずに彼とぶつかり合えたそうです。


中学生の時の親友が離れていった理由は、当時のAさんは全くわからなかったので
何度か本人に直接聞いたそうなのですが、何も教えてくれずに避けられてしまったそうです。

他にも仲の良い友達はいたので、あまり気にしていなかったそうなのですが、今思えばその頃から
理由の分からない恐怖が込み上げてくることが時々あったそうです。

数年後、人伝に聞いた理由は、
Aさんは親友に「私以外の子と仲良くしないで欲しい」と伝えたことがあったそうです。
Aさんは悪気もなく、思ったことをそのまま伝えたのでしたが、親友からすると、
「Aさんは他の友達とも仲良くするのに、自分には他の子と仲良くしないでと言われるのが嫌だった」
「Aさんからは傷つくことを何度も言われていた、勝手なAさんに合わせるのが嫌だった」
と言っていたそうです。

それまでのAさんは「人から嫌われたのかも」と考えたこともありませんでした。

親友が離れていったのは自分の言動が原因だったと知りショックを受けたけど、
「なら、どうしてその時に嫌だと言ってくれなかったんだろう」とも思ったそうです。

自覚はありませんでしたが、初めて受けた「人が離れていく経験」はAさんの心に大きな恐怖を残していました。
普通の友達とは無難に過ごすことができていたので忘れていましたが、
家族以外で初めて好きだと思ったのはこの親友で、その次が彼だったのです。

彼と別れ、気持ちも不安定な時に大好きなお父さんが亡くなりました。

このような状況では辛くて寝込んでしまう事もあると思うのですが、
Aさんは長子(一番上の子)なので、残された母、兄弟を思うととても辛く、
自分が支えなければと必死に考えていたのでAさん自身は十分に悲しむ事もできずにいました。

気丈に振る舞っていても、彼との別れや父親の死の悲しみから心身ともに疲れ
これ以上傷つきたくないのと、気持ちが離れて言ってしまう別れもも、亡くなってしまっての別れも
もう経験したくないので、仲良くなりそうな人とは「また失うことになるのでは」と不安になり
距離を置いてしまっていたのでした。

彼と新しく組んだ女性の奏者との演奏で嫉妬するのも当然の事なのですが、
ショックが続いてもしっかりしてようと思うあまり、自分の気持ちがわからないままで
苦しい気持ちの原因を探しているうちに「自分はこんな性格だ」と思い込んでしまったのです。


悲しいことですが、お父様の死やこの恋愛が今まで気が付かなかった色々なことに気付く
きっかけにもなったと仰っていました。
「このままでは嫌な事」の改善の為、これからどうしていくか方向性も決まりました。

離れていった元親友とは、昔のことのようでも強く気持ちが残っているので連絡をとって
一度お話をしてみることを提案させていただきました。

別れた彼のことは、別れて悲しいと素直に認められ、復縁を望むかはわからないけれど、
どうして気持ちを伝えられなかったのか、は話してみるそうです。

誤解されそうですが、このような方達は親が甘やかして育てたからではなく、
親子の仲が良かっただけで仲が良いと問題が起きやすくなるわけでもなく、
誰も悪い人がいなくても問題が起こることがあるのです。

Aさんはお申し込みの時点で最後にはしっかりと「改善したい。」と書いています。
どう育ったのだとしても、大事なのは「自分で自分をどうにかしたい」と思うことなのです。

余談ですが、この方はなんと伊豆諸島から埼玉県のここ、マグノリアまで来てくださいました。
遠くからお越しいただき「来てよかったです!」と仰っていただけたので嬉しかったです。
ありがとうございました。

このクライアントさんからのご報告:「気持ちの整理と確認の大切さ」

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