大丈夫な子

高校生の女の子がいらっしゃいました。

家で大変な事もある中、成績も優秀で進路についても自分でしっかり考えています。

あることから『自分はダメだ』と思い込んでいました。
いろいろな話をして2時間近く経ったころ「スッキリしました!」と仰ったので
カウンセリング終了しようとし、「あと、何かあるかな?」とお聞きすると、

「うーん・・・言ったってしょうがないことなんだけど、私は、親は親で大変なのもわかってるから
自分のことは自分で考えて、それは当然なんだろうけど、でも私だって辛い時もあるのに、
なのになんで私はいつも期待されて、それが普通で、迷惑ばかりかける◯◯(兄弟)のことばかり 親は、」

ここで言葉を詰まらせてしまったので

「なぜ、お母さんは○○さん(兄弟)のことばかり心配したり助けたり、許したりするの?ってことかな?」

「そうです」

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大人のクライアントさんで、自分の兄弟姉妹が病気だったり障害を持っていたり、問題を起こしてばかりで親を困らせるなど、親の手が掛かってしまう兄弟姉妹がいる人の中には、

子供の頃から自分は『心配をかけない子』でいたことが影響し、今の自分を苦しめている原因になっていたことがあります。

親から愚痴をこぼし続けられたり、辛さをそのままぶつけられ、暴言を吐かれたり、酷い八つ当たりをされていた人もいます。

手がかかる子に比べ、”大丈夫な子”は、親や兄弟姉妹のことを心配しているので、それだけでも心を痛めています。親の大変さを理解しているからこそ、自分は親に心配をかけまいと、何かあっても言わず、言えず。どんな時でも明るくしていたり、喜ばせようと頑張っていることもあります。

でも、「大丈夫な子」はいません。
コンクリートの柱のように強く頑丈にいようとしていると、何かあったときに「しなる」ことが出来ず、少しずつ少しずつヒビが入り、ある日突然ポキンと折れてしまうこともあります。

親は、子供の事だけではない忙しさや辛さもありながら、手がかかる子がいれば、手がかからない子に気を回すことは難しいでしょう。

でも、だからこそ、手がかかる子以外の子供にも『大丈夫ではない時もある』と意識し、疲れていても面倒でも、手が掛からない子供の寂しさを理解し気にかけていた方が、それはその子の為だけではなく、後々親の負担も増えないのです。


この子の最後の話については、

貴女がそう思ってしまうのも当然であり、仕方ない。
けど、親が辛いところを貴女に何も見せないようにしていたとしたら、それを見ているのも辛いかも知れない。

親からはいつか離れる。 その時に その兄弟と自分に「残るもの」の違いについて。
「大人になってからの時間は長い」ということ。
頑張ったことや知識や経験は消えないということ。

親に期待されたからだけではなく、親の期待に応えたい気持ちも含め、貴方は「自分の意思」で志望校を決めたのもある、と話しました。


お母さんが迎えに来てくれるのを待っている間に

「でも、このカウンセリング代出してくれてるのもお母さんなんですよね。(お母さんが)電話で申し込んできた時もとても心配してましたよ」と言うと

「そうなんですよねぇ」と照れ臭そうに笑い、迎えに来たお母さんが、この子の顔を見た瞬間「良かった、良い顔してる!」と言うと、とても嬉しそうに笑っていました。

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