ある男性のクライアントさんが言いました。
「何をやっても毎日つまらない。皆は何が楽しくて生きているんだろう」
同じような事を言った方は他にもいます。
他人と自分を比べ、いじけたり羨んだりして言っているのではなく、心の底から溜め息を吐くように言うのです。
こんな風に「つまらない」と言うのは過去に「強烈に喜べた経験」があったからです。
今はそれがない、無くなってしまった。だからこそ「つまらない」のです。
これはあるお寺の掲示板に書かれていた言葉です。
『 甘い記憶は、現役を続ける人間にとって、無縁のものでなければ嘘である』
甘い記憶とは「喜びの記憶」です。
老い、体が動かなくなってしまった時、人には思い出しか残りません。
過去の喜びだけを思い「あの事があったから、あの思い出だけで満足」そう思うのも、
そう自分に言い聞かせるのも良い。
でもそれは、全てを諦めきってしまえるような状態になってからであり、
『現役を続ける人間』、今を生きている者は『思い出だけで満足している』というのは嘘でなければならない。
現役を続けられているうちは、喜びを求め続けよう。という意味だと思うのです。
現役を続けている者は「諦めることが出来ない自分」がまだいるので「つまらない」とも言えるのです。
「つまらない」と言えているうちは、また心のどこかで喜べる事がない自分に疑問を持っているということです。
疑問を持つということは喜びを求め続けていることには変わりないので、いつかはまた喜べる事が起こる。
喜びを求め続けていたなら、もし喜べる出来事がなかったとしても、
老いた時に、その喜びを求め続けた自分が「甘い記憶」になるのです。