原因探しを続けても前に進めないことがある
「いくつか療法を受けてトラウマも理解でき、癒された気もするのに、思うように改善しない。だから、まだ別の心の原因があるのではないか?」
そう感じる方は少なくありません。
確かに、他の原因があることもあります。原因を知ることは大切です。ただし、原因には「認めやすいもの」と「認めにくいもの」があります。
認めやすい原因は親との関係や他人との出来事。
認めにくい原因は、誰にとっても「嫌なこと・面倒なこと」です。
単純すぎて見過ごされる原因
たとえば、仕事に行けなくなり退職。トラウマも理解し、社会復帰を目指しても仕事を探す気になれない、働いても続かない。そんなとき、人は「まだ心の奥に原因があるのでは」と探しがちです
けれども実際には、
- 朝早く決まった時間に起きるのが面倒
- 満員電車が嫌
- 働きたくない
- 人と関わるのが億劫
- など、あまりにも単純すぎる原因が大きく関わっていることもあります。
これは弱さや怠けではなく、人として当然の感覚です。長い間「通う生活」から離れると、外に出ることや働くことが億劫になるのは自然なことなのです。
単純すぎて見過ごされる原因
現実的な問題を解決する視点も必要です。
この「単純な原因」を無視してしまうと、解決が進みません。心の問題だけを探すのではなく、現実的な課題にも目を向けることが大切です。
たとえば、
- 部屋が片付かないなら「どう片付けるか」「誰に頼むか」「業者はいくらかかるか」を考える。
- 不登校や退職なら「通学・通勤環境」「生活リズム」「家族の希望とのズレ」などを整理する。
事例1:不登校の大学生
高校までは自転車通学。大学は母親の希望で進学した学校で、片道2時間半の満員電車。学びたい学校でもなく、ラッシュの電車も嫌で仕方なかった。
この現実的な要因が不登校の大きな原因でした。
事例2:ゴミ屋敷になった女性
時間をかけてお話を伺ううちに「トイレが壊れてから、トイレを見たくなかった。修理業者はきっと男性なので、壊れて汚いトイレを見られたくなかったので修理も出来ない、と諦めていた」ことが原因でした。修理業者に依頼する方法を一緒に考え、トイレが直ると自然に気持ちが落ち着き、部屋の片付けもできるようになりました。ました。
心の問題と現実の問題を両方見る
どちらのケースも、本人は「これが原因」と気づいていませんでした。カウンセリングでは心の問題を扱うのはもちろんですが、現実的な問題も一緒に見つけて解決していくことが必要です
心の原因探しだけにとどまると、前に進めないことがあります。単純に見えること、現実的な問題こそが解決の糸口になることも多いのです。
心の原因探しは大切だが、それだけでは改善しないこともある。
あまりにも単純すぎることや現実的な問題も原因になり得る。
心と生活、両面からアプローチすることが回復につながる。
あなたが今「前に進めない」と感じていることは、本当に心の問題だけでしょうか。もしかすると「単純すぎて見過ごしていた現実の問題」が隠れているかもしれません。
もし「自分の場合はどうだろう」と思われた方は、ぜひ一度ご相談ください。心の問題だけでなく、生活や環境の中にある現実的な原因も一緒に整理し、解決の糸口を探していきましょう。