心の原因を探し続けるだけではなく

「今までいくつかの療法を受けトラウマもわかり、癒されもしたのですが思うように改善されないし、動けない。だから他に何か(心の)原因があると思うのですが」という方がいます。

確かに他に原因があることもありますし、原因を知るというのは大切です。ですが、原因には「本人が認めやすいもの」と「認めにくいもの」もあり、認めやすいものは「親との関係や、他人が関わった出来事」。認めにくいものとは、誰にとっても「嫌なこと・面倒なもの」です。

例えば、何かがきっかけで仕事に行けなくなり会社を辞めてしまった人がいたとします。心理療法を受けトラウマも理解し、社会復帰しようとしたが仕事を探す気にもなれない。ようやく仕事が見つかったが続かない。そのまま長い時間が経ってしまった。

そうなると『なにか他にも原因があるのではないか』と探します。ですが「過去が関係している心の問題」と言うより、もっと単純すぎて認めるのが難しい原因が含まれていることもあるのです。

単純すぎて認めるのが難しいこととは、

『朝早く 決まった時間に起きるのが面倒』『満員電車に乗るのが嫌』『働きたくない』『人との関わり』

『人との関わり』も、嬉しい事もあれば面倒なこともあります。

私達は幼稚園から始まり、それからずっとどこかに通う、何かをするということを続けています。暫くの間どこかに通う生活・仕事や人から離れていたら、心の葛藤はあっても「楽な部分」にはあっというまに慣れてしまいます。その人が弱いのでも怠け者なのでもなく、外に出ることや働くことが億劫になってしまうのは当然のことなのです。

こういったことは単純過ぎて「そんな当たり前のこと」が「問題であるわけはない」と無視してしまいやすいのですが、これも「原因の一つ」なのです。「ああ、それが面倒だったらか」と認めるだけでも違います。

単純なことも原因だと考え、それが分かったのなら「何から始めるか」「どのように始めるか」「どうしたら始めやすいか」を考える必要があります。

例えば、ゴミや物であふれた部屋が片付けられないという問題なら「片付けられない原因」を探し続けたり「片づけられる性格になる方法」を探すことも大事ですが、先ず今の部屋をどうにかすべきです。

「どうやって片付けるか?」「ゴミはどのように処分するか?」「誰に手伝ってもらうか?」

長年自分で片付けようとしても無理だったのなら、業者に頼むことも考え、「お金はどのくらい必要で、業者はどう探すか?」「その費用はどうするか?」これらを考えるのが先でしょう。

実際に、不登校が続いていた大学生が精神科に通い、様々な心理テストや心理療法を受けても改善しないからと、カウンセリングを受けにきましたが、既に心の問題、原因は解明していたと感じたので、それ以外での嫌なことを伺うと、高校までは自転車通学で満員電車には乗ったこともなかったのに、大学は通学時間が片道二時間半もかかり、元々本人の希望ではなくお母様が強く希望して入った学校だったので、学びたくない学校に、また嫌なラッシュの電車に乗り二時間半もかけて通うのが嫌でたまらなかったことが原因だったケースや、

部屋がゴミ屋敷になってしまっているので性格に問題があると考え、長年精神科に通い続けていたけれど改善されないので、とカウンセリングを受けにきたという女性は、何度引っ越しをしても同じ状態になるというのではなく、この部屋だけだと言うので、細かくお話を伺ってみると、部屋のトイレが故障している。トイレは近所にある実家のを使っている。トイレは自分でも汚くて見たくない。締め切ったままトイレの扉を見ても気分が悪くなるから、トイレの方は見ないようにしている。トイレを誰にも見られたくなかったので人も呼ばなくなった。修理も頼めなかった。そのうち部屋に対して投げ槍な気持ちになっていった。ゴミを業者に片付けてもらいたくてもトイレを見られるのが嫌だったということがわかりました。

なので、修理業者は汚いトイレなんて見慣れているとお話しし、修理業者さんと顔を合わせたくないのなら貴重品だけ持ち、お母さんに鍵を預けてトイレ修理の業者さんに渡してもらってはと提案させていただき、トイレを修理し、ゴミは業者に片付けてもらうと、嘘のように落ち着き「心の問題」は考えなくなったというケースもあります。

どちらのケースも本人もこれが原因だとは分かっていませんでした。カウンセリングでは心の問題も考えますが、現実的な問題も探し、考えます。現実的な問題も考えないと「心の問題」と思ったまま、解決しないまま止まってしまうこともあるからです。

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