揺れを認める

モノクロ

「自分がどうしたいのか分からなくなる」という人がいます。
その原因のひとつに、「なんでも白黒はっきりさせようとする傾向」があります。

たとえば、ある食べ物が大好きだったとします。
それを連日食べ続けていれば、当然飽きもくるでしょう。
また、その日の気分によって「今日は食べたくない」と感じることもあるはずです。

ところが、そういうときに「私はもうこれが嫌いになった」と極端に判断してしまう。
さらにはそれを周囲に口にしてしまう。
すると、後になってまた食べたくなったとしても、どこかで抵抗を感じてしまい、結果的に食べなくなってしまうのです。

こうした判断は、たかが食べ物のこと、たいしたことのないように思えるかもしれません。
けれども、日常の小さな場面でこうした思考の癖が積み重なると、気づかないうちに「揺れることを許さない」自分ができあがってしまいます。
そしてそれが、もっと大きな選択や感情の揺れに直面したときにも、同じように極端な結論を出す癖につながっていくのです。

これは趣味や仕事など「好きなこと」に対しても同じことが言えます。
最初は夢中になって取り組めても、疲れたり、うまくいかなかったりする時期は誰にでも訪れます。
しかし、そこで「自分には向いていない」「やっぱり好きじゃなかった」と結論づけてしまい、手放してしまう。
これを繰り返していると、自分が本当に何を好きなのか、次第に分からなくなっていくのです。

大切なのは、
「今は疲れているだけかもしれない」
「今日は気分が乗らないだけかもしれない」
といった、自分の“揺れ”を受け入れることです。

その物事自体を否定するのではなく、自分の内側にある一時的な感情として認識する。
そうすることで、自分に振り回されることなく、本当にやりたいことにまっすぐ向かうことができるようになります。

あなた自身は、どうですか?

かつて好きだったのに、少しうまくいかなくなっただけで「やっぱり違った」と手放してしまったものはありますか?
それは本当に「向いていなかった」のでしょうか。
それとも、一時的な疲れや迷いの中で、判断を急いでしまっただけかもしれません。

「揺れている自分」と付き合う小さなヒント

迷いや疲れを感じたときは、無理に答えを出そうとせず、まず「今の気分」をそのまま受け止めてみてください。

たとえば──
• 日記やメモに「今の気分」を書き出す
• 「今日はやらない」と一旦決めることで、自分を守る
• 「それでも好きかどうか」を、少し時間を置いてから見直してみる

揺れることは悪いことではありません。
揺れの中にこそ、あなたの本音や本当の願いが潜んでいることもあります。

こうした思考の癖は、自分ひとりでは気づきにくいこともあります。
長い間無意識で繰り返してきたパターンであればなおさら、言葉にするのが難しく感じるかもしれません。

そんなときは、ぜひカウンセリングで一緒に、ゆっくりと紐解いていきましょう。
揺れを責めるのではなく、「本当のあなた」を見つけていく時間になります。

自分がどうしたいのか分からなくなる理由は他にもあります。
たとえば「他人にどう思われるか」を気にして、動けなくなってしまうことも。
それについては、また次の機会にお話しします。

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